「雨季のランタン酪農組合だより」

 数週間毎に送られてくる現地からの画像。あまりに早い展開に事務局も面食らっているというのが正直なところです。

 ランタン酪農組合は5月のゴタルー会議の後、家畜群の移動に合わせるように、施設の建設、手探りのチーズ作りを進めています。彼らの提案通りとも言えますが、それにしてもなんというスピードでしょう。家畜が相手であるし、ゴタルーたち全員はすでに「キャンチェンチーズ工場」から「ランタン酪農組合」に舵を切り替えてしまったのですから、当然と言えば当然と言えます。そして望んでいたこととは言え、私たちはランタンの牧畜をそのような方向に進めてしまったと言わねばなりません。責任重大であるし、彼らの明日を見守り続けたいと思います。

 ランタン酪農組会から届いた画像は、7月から8月にかけて設備の建設に関するものと、9月に入って送られてきた最新の放牧地の様子を伝えるものとあります。時期的に前後しますが、それぞれを以下で見ていただきたいと思います。

1)夏の放牧地から

 9月初旬の段階で、家畜群は最高度の放牧地から下降、現在標高4200〜4300メートル辺りにいます。
 ランタン谷の夏の放牧グループは3班。右岸の2グループはヤラ氷河とランタンリルン氷河周辺の草地。対岸は森林限界周辺を上下移動。あともう一つ左岸の川沿いを移動するグループがありますが、2軒だけで作業しています。

 構成は以下のようです:
【ヤラグループ】セダル、プバ・ラクパ、ゴンバ・リンジン、チューキ
【ツェルべチェグループ】ニマ・チェーマ、グリ、アンギュル、アマ・ツェリン
【ヌプリグループ】カンバ・ドルジェ、ノルブ・パルダー、ソナム・ギャルツェン、ロプサン、
         トゥンドゥ・ワンドゥ、ツェリン・ワンドゥ、ゴンボ、シンドゥム・ドルジェ
【ランタンコラ左岸奥を移動する単独行動のグループ】パルコー、シンドゥム・ラクパ

ツェルべチェGの放牧地

 写真は新しくランタン酪農組合で記録係り兼務でゴタルー(牧畜専従者)のサポートをしているバブ・ニマ(27歳)からのもので、Messenger経由で送ってきました。
 ニマは写真を通して、放牧地3ヶ所、酪農器具、それとキャンチェンの仮作業場の今を伝えています。
 特に、酪農道具が整いつつあるのがわかります。6月半ばに酪農組合長のセンノルブがカトマンドゥで調達した器具をミニバンに詰め込んで山へ戻って行きましたが、電話では、調達できたのは一部で多くはカトマンドゥでは入手できなかったとのことでした。もう製造していないのです。不足の器具はキャンチェンチーズ工場が長く使っていたものを譲ってもらったのでしょう。写真では、見慣れた大きな銅鍋やチーズ成型用の木枠などが散見されます。
 それと、放牧地の写真に、乳搾りをしているセダルの父親が写っています。復帰したのですね。四六時中赤い顔をしてお酒の匂いをプンプンさせていた。なん年ぶりに復帰したのでしょう。対岸のグループで中心的に乳製品作りをしているカンバ・ドルジェ。ノルブ・パルダー、トゥンドゥ・ワンドゥも働いています。嬉しいですね。

 ツェルべチェGの放牧地
ツェルべチェGの放牧地ツェルべチェGの放牧地新しい酪農組合スタッフのニマ。 右手にリルン氷河のモレーン新しい酪農組合スタッフのニマ。
右手にリルン氷河のモレーン
ランタン谷にはいたるところに祈りの場所がありますランタン谷にはいたるところに
祈りの場所があります
ヤラGの放牧地
ヤラGの放牧地搾乳中のゴンバ・リンジンと プバ・ラクパ(後方)搾乳中のゴンバ・リンジンと
プバ・ラクパ(後方)
セダルの父親、ゴンバ・トゥンドゥップセダルの父親、
ゴンバ・トゥンドゥップ
ヌプリGの放牧地
キンコルチェンの放牧地キンコルチェンの放牧地ヌプリGの放牧地
クリームセパレターを回すカンバ・ドルジェ。左の緑色のプラスティックは成型したチーズ。この後、キャンチェンの仮作業所へ移す。クリームセパレターを回すカンバ・ドルジェ。
左の緑色のプラスティックは成型したチーズ。
この後、キャンチェンの仮作業所へ移す。
ノルブ・パルダーノルブ・パルダー
酪農機具
酪農機具2酪農機具1
酪農機具3酪農機具4
キャンチェンの仮作業場にて
バターチャーンを回すニマバターチャーンを回すニマ放牧地から運ばれてきたチーズを塩水につける放牧地から運ばれてきた
チーズを塩水につける
キャンチェン仮作業場キャンチェン仮作業場

2)ランタン酪農組合の施設

 酪農組合組合の施設として、①キャンチェンのチーズ貯蔵庫兼売店②ランタン酪農組合センターハウスを建設中です。あるいは、もう完成まぢかかもしれません。画像は組合長のセンノルブから、カトマンドゥ経由で届きました。
 この2つの施設は、大雑把な見取り図(縦横と壁の幅、窓、水道などの位置)と完成予想図を見せただけですが、写真で見る限りほぼそれに沿って作られているようです。驚きます。

①キャンチェンのチーズ貯蔵庫兼売店

キャンチェンのチーズ貯蔵庫兼売店

 着工は貞兼の下山後すぐの5月末、完成は8月初旬。ニューズレターNo.6では仮作業場の様子を載せましたが、この完成後の写真ではたくさんのチーズが庫内に収まっています。放牧地で作られたチーズを仮作業場(キャンチェンゴンバそば)で塩水に浸け、この貯蔵庫に運ばれてくるのでしょう。新たに庫内で作業するものやチーズを運搬するものなど、季節スタッフを雇い入れているようです。
 また、キャンチェンゴンバ下の仮設住宅の一角に作った簡易のトタン囲いの家をキャンチェンでの作業所にしたいようです。もともと貯蔵庫のつもりで人任せに作ったものでしたが、とても貯蔵に向く建物ではなく、建設作業員たちが宿舎に使っていました。
 今年の経験を踏まえ、機能的な施設に生まれ変わるのではないかと思います。

キャンチェンチーズ貯蔵庫
建物建設は、まず、土台や壁となる石の切り出しから始まります。建物建設は、まず、土台や壁となる石の切り出しから始まります。建物はキャンチェン集落の北東、緑のングードゥップの宿の裏に建てられました。建物はキャンチェン集落の北東、緑のングードゥップの宿の裏に建てられました。貯蔵庫内部 赤いコートが酪農組合長のセンノルブ、右やグリ(兄と共にツェルべチェG)貯蔵庫内部 赤いコートが酪農組合長のセンノルブ、右やグリ(兄と共にツェルべチェG)
向かって左からングードゥップ(組合出納係)、センノルブ(組合長)、右二人は季節スタッフ向かって左からングードゥップ(組合出納係)、センノルブ(組合長)、右二人は季節スタッフ赤色・ランタン酪農組合キャンチェン貯蔵庫 青色・旧キャンチェンチーズ工場

  • 赤色・ランタン酪農組合キャンチェン貯蔵庫
  • 青色・旧キャンチェンチーズ工場

②ランタン酪農組合センターハウス

 ゴタルーたちの拠点になるもので、ランタン村ユル地区の東側高台、村人やトレッカーたちの道沿いに立地しています。8月末に屋根を葺いた写真が送られてきました。
 ここには長期に保存するチーズとカチョカヴァロ・チーズ、それにバターを貯蔵する設備、およびチーズ販売を兼ねたティサロンも経営します。組合長の話では接客は女性に任せるそうです。カトマンドゥで教育を受けた女性で、村に戻り両親の手伝いをしている者の中から選ばれるのでしょう。

ランタン酪農組合センターハウス
建設用地 東西30 メートル x 南北20メートル建設用地
東西30 メートル x 南北20メートル
基礎工事中基礎工事中壁の厚さは50センチ、手前が貯蔵庫、上がワークショップ壁の厚さは50センチ、手前が貯蔵庫、上がワークショップ
8月終わり・赤い屋根がつきました。8月終わり・赤い屋根がつきました。トレッカーや村人たちはこのアングルから建物を見ます。 前庭にはハーブやお花、野菜の試験栽培をする予定です。トレッカーや村人たちはこのアングルから建物を見ます。
前庭にはハーブやお花、野菜の試験栽培をする予定です。
セターハウスから村方向を望むセンターハウスから村方向を望む

 10月に入れば、徐々に家畜群は下降してきます。トレッカーたちもやってきます。センターハウス完成と同時に事業も本格的に始動するのではないでしょうか。5月のゴタルー会議の後、センノルブ組合長が私に「チチ、11月頃に来てみてよ」と言っていたけど、彼はそういう状況を描いていたのかもしれませんね。

3)今後の展開

最初に酪農組合支援にかかる5月以降現在までの会計のご報告:

施設の建設費総額
 ①キャンチェンのチーズ貯蔵庫兼売店   80万ルピー
 ②ランタン酪農組合センターハウス  300万ルピー
酪農器具購入費              37万ルピー
乳製品買い上げアドヴァンス        50万ルピー
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合計                 467万ルピー
ゴタルーに支払われるもので、シーズンに入れば、回収が見込めます。

(これまでの)ランタンプランからの送金総額 180万ルピー
残りの支援額               287万ルピー

 ランタンの経済は依然としてホテル経営が中心です。農業は、3年目と言っても、補完的というほどにも期待できない状態です。酪農に従事するゴタルーは、全戸の17%ほどです。
 しかし、組合はホテル経営も酪農もしていない者たちにわずかですが雇用を生み出しているように思えます。将来的にその可能性は十分あると見ています。
 新生ランタン酪農組合が村の経済をある程度牽引して行けるかどうか、今年の彼らの踏ん張りにかかっていると言っても過言ではない気がします。みなさんのご支援でここまできました。引き続きのご支援とご協力をお願いしたいと思います。(貞兼)